あらすじ
ゴトンゴトンと揺れる重い音で、私は目を覚ました。 ぼんやりとモヤがかかる頭を振りながら辺りを見ると、古びた鉄道の客席に座っていることがわかる。窓の外は、一面の群青(ぐんじょう)ときらめく銀色の星たち。 私は、いつか物語で読んだ銀河鉄道に乗っていた。 向かい合わせに置かれた、木製の椅子。シートに張られたビロードの布地はなめらかで上質なものだったが、ひじ掛けはあちこち黒ずんでいて使いこまれた様子を見せている。 そして、私の向かいには——死んだはずの少女、夕夏(ゆうか)がびしょ濡れで座っていた。 「ケンタウルス祭の夜……私を、水に落としたのはだあれ……?」 夕夏は記憶を失っている。犯人は、私たちの中の誰かだという。 濡れた髪のあいだから、夕夏のうつろな瞳が私たちをとらえた。 その時、私たちは直感した。夕夏は、犯人を連れて行こうとしている。 誰かひとりが、この銀河鉄道から降りられないのだ。
キャラクター
鐘谷 朝夏(かなや あさか)
かなや あさか
S高校3年生。17歳。 夕夏(ゆうか)の双子の姉。小柄ながら人目をひく華やかな外見で、S高演劇部のスター。 モデル活動も並行しており、卒業と同時に芸能界デビューが決まっている。 髪の色は明るい栗色。 ケンタウルス祭では、演劇部員としてオリオンホールで公演をしていた。
高見 駆(たかみ かける)
たかみ かける
S高校3年生。17歳。 朝夏の恋人。S高ストリートダンス部の人気ダンサー。バスケ部も兼任しており、レギュラーメンバー。 スポーツマンらしい体格と甘いルックスで、朝夏のモデル事務所からスカウトが来ている。 ケンタウルス祭では、ストリートダンス部員として視聴覚ホールで公演をしていた。
生駒 蒼汰(いこま そうた)
いこま そうた
S高校3年生。17歳。 美術部に所属する、無口なメガネ少年。 朝夏・夕夏とは家族ぐるみの付き合いがあり、三人は幼なじみ。 ケンタウルス祭では、美術部員として美術室でカフェの運営をしていた。
天野 博人(あまの ひろと)
あまの ひろと
S高校の化学教師。29歳。 朝夏・夕夏・駆・蒼汰が所属する3-Aのクラス担任。 お人よしで、どこか抜けている。 実験準備室にこもりがちなオタク気質。S高卒業生。 ケンタウルス祭では、化学部顧問として化学室でプラネタリウムの運営をしていた。
制作者のコメント
2020年にユウグレノート公式サイトにてリリースした作品が、このたびUZUに収録となりました。 物語と推理。中編ミステリーの魅力を約二時間半にぎゅっと詰め込んで制作しました。 シナリオライティング:渡瀬可鳴子(ユウグレノート監修)