カリストは遥か遠く
ぐっち
西暦2320年。
火星のテラフォーミングは着々と進み、人類の目は更に遠方にある木星、土星、そして太陽系の最外縁である冥王星へと向けられていた。
「プルートショット」
その挑戦は、かつてのムーンショットになぞらえてそう呼ばれた。
プルートショット成就のため、民間会社も宇宙開発に乗り出した頃、宇宙開発ベンチャー「トレミー」によって1機の有人宇宙船が打ち上げられた。
目的地は木星の第4衛星カリスト。火星より遠方の宇宙を探索するための足掛かりとして、木星圏の開発は最も過熱している事業だった。
様々な期待を乗せて、トレミーの宇宙船「ALMA号」は片道120日の長い旅に出た。
そしてALMA号が地球を発ってから84日目の14時22分。
事件は起きた。
唐突な衝撃と警報に、コールドスリープ中の船員たちは目を覚ました。
どうやらALMA号が小惑星と接触したようだ。異常事態に困惑する中、ブリッジに向かった船員たちを待っていたのは、既に事切れていたトレミーCEO ハリソンだった。