御影家の兄弟
あやめ@宇治楽団
――大正十二年 五月十二日。
実業家・御影零治(みかげれいじ)は京都の貧しい農家から成り上がり、日本有数の企業「御影製鉄業(みかげせいてつしょ)」を築き上げた男だ。
成功者として名を馳せる一方、最愛の妻・千代(ちよ)を病で失って以来、その冷酷な支配は家族にまで及んでいた。
そんな零治の三人の息子、一哉(かずや)、二典(つぐのり)、三輝(みつき)は、亡き母に似た美しい容姿と気品から、地元で「御影の三兄弟」として噂される存在だった。
華やかな彼らの存在は御影家の名声をさらに高めていた。
ある夜、御影家を揺るがす大事件が起こる。
零治が最も愛し、大切にしていたダイヤモンド「女神の微笑み」が姿を消したのだ。
「犯人は誰だ! 今すぐ私の宝石を返せ!」
零治の怒声が響き渡る。
果たしてダイヤモンド「女神の微笑み」を盗んだのは誰なのか?
欲望、嫉妬、裏切りが交わる中、御影家の運命は大きく動き出す。