深い赤を愛する
山口・キューワン Q1
激しい風雨が吹き荒れる邸宅の一室で、大病院を一代で築き上げた院長が静かに死を待っていた。
病魔に蝕まれ、医師は終末医療を施し、彼の命の火は消えかけている。妻、娘、護衛、使用人、そして彼の友人。それぞれが、彼の最期を見届けるために集まっていた。
薄れゆく意識の中、彼はかすれた声でひとつの言葉を発する。それは、彼らの運命を大きく揺るがすものであった。
「……感謝している。私の妻、娘、そして……息子に。」
院長には、息子などいないはずだった――そう、誰もが信じていた。しかし、この一言がすべてを覆し、一同は疑念の渦へと巻きこまれてゆく。この中で、誰が真実を知り、誰が欺いているのか。
運命の糸に絡め取られた彼らが行き着く先は、光か、それとも闇か。死の匂いが満ちる邸宅の一室で、探り合いの幕が開く。
「深い赤を愛する」
これは、とある家族の罪と罰。
――そして、赤い絆の物語。